Twenty One Capital Inc.は、12月9日にSPAC合併による上場初日に株価が25%暴落し、初値は10.74ドルとCantor Equity Partnersの終値14.27ドルを大きく下回りました。このTetherやソフトバンクグループなどが設立したビットコイン財庫会社は、約39億ドル相当のビットコインを保有しています。
Strike創業者兼CEOのJack MallersがTwenty One CapitalのCEOを務めていることは、本社と他のビットコイン財庫会社との最大の違いです。Mallersはビットコイン・ライトニングネットワークの熱心な支持者で、Strikeはビットコイン・ライトニングネットワーク上のデジタル決済プロバイダーとして、エルサルバドルなどでビットコインの法定通貨決済インフラを推進してきました。
Cantor EquityとTwenty Oneの合併には、4.865億ドルのシニア転換社債と約3.65億ドルの普通株式を含む公開株式への私募投資が組み込まれています。Cantor Fitzgeraldはこの取引の販売代理を担っています。こうした複雑な資金調達構造はSPAC取引でよく見られますが、シニア転換社債の存在は企業に大きな債務負担をもたらし、ビットコイン価格下落時にはリスクが拡大します。
Twenty One 上場初日に25%暴落!39億ドル相当のビットコイン保有が過小評価
Twenty One Capital Inc.は、12月9日にSPAC合併による上場初日に株価が25%暴落し、初値は10.74ドルとCantor Equity Partnersの終値14.27ドルを大きく下回りました。このTetherやソフトバンクグループなどが設立したビットコイン財庫会社は、約39億ドル相当のビットコインを保有しています。
ゼロプレミアム戦略はなぜ失敗したのか
(出典:Trading View)
Twenty Oneと他のビットコイン財庫会社との最大の違いは、バリュエーションロジックにあります。Michael SaylorのMicroStrategy(MSTR)は、純資産価値(NAV)の2~3倍ものプレミアムで取引されており、投資家はSaylorが「1株あたりのビットコイン保有量」を継続的に増やせると信じてプレミアムを支払っています。これに対し、Twenty Oneはあえてゼロプレミアムまたはディスカウント戦略を採用し、「コストパフォーマンス」で投資家を惹きつけようとしました。
Mallersは4月のBloombergのインタビューで「私たちの国債は純資産価値を上回る価格で取引されていません。したがって、ビットコインへのエクスポージャーを求める人々にとって非常に魅力的なツールだと考えており、たとえこの流れの最終的な勝者でなくとも、その一角にはなれると信じています」と述べました。しかし、市場は反応しませんでした。初日の25%下落は、投資家がディスカウントでTwenty Oneを買うよりも、プレミアムを払ってMicroStrategyを買うことを選んだことを示しています。
この市場の反応は残酷な現実を浮き彫りにしています。ビットコイン財庫会社の分野で投資家が買っているのはビットコインそのもの(ETFを直接買える)ではなく、会社が継続的にビットコインを積み上げる能力と経営陣の信頼です。MicroStrategyはどんな相場でも買い増しを続けてきた実績がありますが、Twenty Oneは新参者としてその信頼をまだ築けていません。ゼロプレミアム戦略は論理的には合理的ですが、実践では信頼のギャップを埋めることができませんでした。
もう1社の非SPAC型ビットコイン財庫会社ProCap Financial Inc.も、月曜日の初取引日に株価が14%下落しました。今年はトークン価格の下落、競争激化、プレミアム縮小の影響を受け、デジタル資産運用会社全体が大きく下落しています。この全体的な弱含みが、ビットコイン関連企業IPOのシステミックな課題を浮き彫りにしています。
豪華な株主陣容と39億ドルの保有額
Twenty OneはCantor Fitzgerald LPの関連会社、ステーブルコイン発行企業Tether Holdings SA、ソフトバンクグループが共同設立しました。Cantor Fitzgerald会長Brandon Lutnick(米商務長官Howard Lutnickの息子)がCantor Equity PartnersのCEOを務めています。声明によれば、Twenty OneはTetherとBitfinexが筆頭株主となり、ソフトバンクは大口のマイノリティ出資者となります。
この株主陣は暗号資産業界でも極めて異例です。Cantor Fitzgeraldはウォール街の伝統的金融大手で、現在Tetherが保有する数十億ドル規模の米国債の主要カストディアンです。Tetherは世界最大のステーブルコイン発行体で、時価総額1,400億ドル超と暗号市場で豊富な経験を持ちます。ソフトバンクは世界有数のテック投資機関で、アリババやUberなどの有名企業に投資してきました。
Twenty Oneの三大コア株主と戦略的意義
Cantor Fitzgerald:伝統的金融市場のコンプライアンスとウォール街ネットワークを提供し、Twenty Oneの資金調達と機関投資家向け販売の道を開く
Tether:ステーブルコインおよび暗号取引所の運営経験をもたらし、将来的にUSDT決済機能統合もあり得る
ソフトバンクグループ:世界トップクラスのVCによるブランド価値向上と、投資先企業を顧客として巻き込む可能性
Twenty Oneは約39億ドル相当のビットコインを保有しており、この規模はビットコイン財庫会社の中でも上位に入ります。MicroStrategyは約480億ドル、Marathon Digitalは約15億ドルを保有しており、Twenty Oneの39億ドルは第二グループのリーダー格です。しかし、保有規模が株価の支えにはつながっておらず、ビットコイン財庫会社のバリュエーションの複雑さを示しています。
Jack Mallersのライトニングネットワーク差別化戦略
Strike創業者兼CEOのJack MallersがTwenty One CapitalのCEOを務めていることは、本社と他のビットコイン財庫会社との最大の違いです。Mallersはビットコイン・ライトニングネットワークの熱心な支持者で、Strikeはビットコイン・ライトニングネットワーク上のデジタル決済プロバイダーとして、エルサルバドルなどでビットコインの法定通貨決済インフラを推進してきました。
Twenty Oneのビジネスモデルは単なるビットコイン保有にとどまらず、ビットコインの金融インフラ構築や、関連するメディア・教育リソースの創出にも乗り出す計画です。このようなポジショニングは、単なる「ビットコイン蓄積者」から「ビットコイン・エコシステムの構築者」への転換を狙うものです。ライトニングネットワークの低手数料・即時決済という特長は、小額決済や国際送金に理想的なソリューションです。
しかし市場は、この差別化戦略の価値を評価していないようです。初日の25%下落は、投資家が会社のビットコイン保有量や調達コストにより注目しており、長期的なエコシステム構築ビジョンには関心が薄いことを示しました。これは、現状のビットコイン関連企業投資家が短期志向で、「1株あたりのビットコイン増加」という即効性を重視し、数年かかるインフラ投資の価値を評価しない現実を反映しています。
上場タイミングの致命的ミス
同社は暗号資産業界が苦境にあるタイミングで上場を選択しました。ビットコイン価格は今年初めの高値からすでに28%以上下落し、約126,000ドルから現在約90,000ドルまで下げています。暗号資産関連IPOの業績もまちまちで、もう1社の非SPACビットコイン財庫会社ProCap Financial Inc.は月曜初取引日に14%下落しました。
Cantor EquityとTwenty Oneの合併には、4.865億ドルのシニア転換社債と約3.65億ドルの普通株式を含む公開株式への私募投資が組み込まれています。Cantor Fitzgeraldはこの取引の販売代理を担っています。こうした複雑な資金調達構造はSPAC取引でよく見られますが、シニア転換社債の存在は企業に大きな債務負担をもたらし、ビットコイン価格下落時にはリスクが拡大します。
テクニカルには、Twenty OneのNYSE上場初日の出来高は比較的低く、機関投資家の参加が限定的であることが示唆されます。ビットコイン価格の弱含みやMicroStrategyなどリーダー企業のプレミアム縮小という中、新規参入者は「ビジネスモデルの有効性を証明し、なぜMicroStrategyではなく自社を選ぶべきかを市場に納得させる」という二重の課題に直面しています。Twenty Oneの初日のパフォーマンスは、その課題が想定以上に厳しいことを物語っています。